短編(無題)

短編小説(?)っぽいやつ (Posted:2005-08-09)
作:瓦・フラワーマン・弘二


雨が降ってきた。

待ち行く人が、慣れた無言の動作で傘を差す。

僕はその光景を、今まで何度となく黙って見てきた。

いいや、その中に多分探していたのだろう。



あの時の赤い傘を。



昭和もそろそろ終わりを告げる時代の、淡い恋の話、

聞きます?



誰にだってある学生の頃の話です。

クラス替えも終わり新学期を迎えた2年3組のクラス。

まだ知らぬ顔ばかりで、戸惑いの空気が立ち込める教室。

なんとかこの空気を変えたくて知ってる顔を探していると、
教室の前方のドアが大きな音を立てて、開いた。

"ガラ"

「ちぃーす。2の3はここですか?」

大きな音の後の大きな声、学年でも有名なお調子者、瓦 弘二だ。

僕からしてみたら決してお調子者には見えないが
何故か弘二は有名だった。

きっと、前の学年の時のパルキーとのケンカが、風に乗り、大きな話となって、
彼をお調子者で、少しケンカが強いんじゃないか、と
尾にヒレが付いて、芽が出て膨らんだ話になったのだろう。

だが僕はあの時のケンカを知っているのだが、
弘二はパルキーにマウントポジションをとられ、
終始殴られっぱなしだったのだ。

しかし、そのケンカ(?)のウワサだけで
3年間、彼は誰にも手を出されることなく、
卒業して行くのだから"運"としか言いようがない。

さて、その"運"がいつまで続くのやら、
世の中、そんなに甘くない。

おっと、弘二の話をしていたらすっかり話が変わってしまった。(なぜ?)

弘二でもこういう時には役に立つものだ。

さっきまでの空気が、彼の開けたドアからの風によって一瞬にして変わった。

その風の中、偶然に目が合った女の子がいた。

普通の子のようで、普通よりも全然良くって、
どっちなんだろうかなあと思っていながら、
軽く会釈をすると、その子がとてつもない笑顔で返してきた。

さっきまで左右に揺れていたメーターの針が、
レッド・ゾーンを軽く越えて、
サイレンの音さえ聞こえてきた。

「あぁ あぁ ダメだ、ダメ。俺にはつい3日前にできた彼女がいるじゃないか
 1年がかりで何とか彼女になってもらった子がいるだろう!」

「あぁー」

"ガラ"

「席につけー。チャイムの音が聞こえなかったのか」

どうやら僕のサイレンの音は440Hzを軽く越えていたようだ。

そしてその日の放課後、いつものように学校の外回り10周を石段の影に隠れ、
テニス部の彼女を見ていた。

テニスゲームの審判のマリオのように(ってなんだ?)。

「さようなら」 ふいにどこからかあの子の声が。

「エ゛ッ」

「あ゛っ、さようなら」

(あぁ、帰宅部なんだ。歩く姿がちょっとペンギンぽくない?)

なんてあの子を見送ってたら、

「オーシ、お前ら、今から最後まで外回り」

そしてそれから鬼のような監督の声が

「今日はここまで」

っと放送に乗って流れたのが、32周目だった。


その夜は、オールナイトニッポンを聴くことなく眠った。



...続く


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